アレルギー性鼻炎とは
アレルギー性鼻炎とは、本来は無害なはずの花粉やハウスダストなどに体が過剰に反応し、鼻の粘膜に炎症が起こる疾患です。
体内にアレルゲン(抗原)が侵入すると、免疫システムがIgE抗体を介して反応し、ヒスタミンなどの化学物質が放出されます。
これにより、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといったアレルギー症状が現れます。
季節性のものを「季節性アレルギー性鼻炎」あるいは「花粉症」、一年中症状が出るものを「通年性アレルギー性鼻炎」と呼びます。
適切な検査と治療により、症状を大きく軽減させることができます。
アレルギー性鼻炎の症状
- くしゃみ(連発することも)
- 水のような鼻水
- 鼻づまり
- 鼻のかゆみ
- 目のかゆみ・涙目
- 喉の違和感、咳
- 頭重感、集中力低下、睡眠障害(特に鼻づまりが強い場合)
など
アレルギー性鼻炎の種類
通年性アレルギー性鼻炎
主にハウスダスト、ダニ、カビ、ペットの毛やフケなどが原因となり、年間を通して症状が見られます。
室内環境に常に存在するアレルゲンが関係しているため、季節に関係なく症状が続くのが特徴です。
軽度であっても慢性的に鼻づまりや鼻水が続くことで、生活の質が下がってしまいます。
特に寝ている間の鼻づまりが強いと、睡眠の質が低下し、日中の集中力にも影響してしまうので、早期の改善が望まれます。
季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)
季節ごとに飛散する花粉が原因で発症するアレルギー性鼻炎です。
毎年決まった時期に症状が出現するのが特徴で、次のような花粉が代表的です:
- スギ・ヒノキ:2月〜4月(春)
- イネ科(カモガヤなど):5月〜6月(初夏)
- キク科(ブタクサ、ヨモギなど):8月〜10月(秋)
など
これらの花粉は地域や天候によって飛散量に変動があります。
花粉症は一度発症すると毎年繰り返すことが多く、早期の対策が重要です。
アレルギー性鼻炎の検査
アレルギー性鼻炎の診断には、問診や視診に加え、血液検査によるアレルゲン特異的IgE抗体検査が有効です。
これは体内に存在するアレルゲンに対するIgE抗体の有無や量を調べる検査で、アレルギーの原因物質を特定するのに役立ちます。
また、即日で結果がわかるイムノキャップラピッド(指先から採血して行う簡易検査)や、皮膚に直接アレルゲンを接触させて反応を見る「皮膚プリックテスト」などもあります。
原因を明確にすることで、的確な治療方針を立てることが可能になります。
アレルギー性鼻炎の治療法
薬物治療
抗ヒスタミン薬(内服薬)
アレルギー反応によって放出されるヒスタミンの作用を抑える薬です。
くしゃみや鼻水、かゆみなどの症状に効果が期待できます。
第二世代抗ヒスタミン薬は眠気が少なく、日常生活への影響を抑えることができます。
ステロイド薬(点鼻薬)
鼻の粘膜の炎症を抑える効果が強く、鼻づまりや鼻水に高い効果が期待できます。
局所的に作用するため、全身への影響が少ないのが特徴です。
毎日継続して使うことで、シーズン中の症状をコントロールしやすくなります。
ロイコトリエン受容体拮抗薬
鼻閉(鼻づまり)に効果が期待できる薬で、気管支喘息の治療にも用いられます。
抗ヒスタミン薬との併用で、相乗効果が期待されます。
ゾレア(抗IgE抗体製剤)
難治性の重症アレルギー性鼻炎に対して使用される注射薬です。
IgEというアレルギー反応の根幹にある物質の働きを直接抑えることで、強力な症状緩和が期待されます。
当院ではゾレアによる治療を行っています。
適応には一定の条件がありますので、医師の診断と血液検査に基づいて使用の可否を判断します。
生活習慣・環境の改善
アレルゲンとの接触を減らすことは、症状の軽減に非常に効果的です。
- 寝具のこまめな洗濯・乾燥
- 空気清浄機や掃除機による室内環境の整備
- 花粉飛散時のマスク・メガネの着用、洗顔・うがいの励行
- 外出後の衣服の花粉除去
- ペットの毛・フケへの対策
これらを日常的に行うことで、薬の使用量を減らすことにもつながります。
免疫療法
アレルギーの根本的な改善を目指す治療法です。
代表的なものに「舌下免疫療法」があり、この場合はスギ花粉やダニに対するアレルギーに適応されます。
少量のアレルゲンを毎日体内に取り込むことで、免疫を少しずつ慣らし、アレルギー反応を抑える仕組みです。
- 治療期間は3年以上が目安
- 毎日継続して服用する必要があります
- 副作用(口内のかゆみなど)は軽度で、多くは数日で改善します
- 対象年齢やアレルゲンの種類に制限があります
症状の軽減だけでなく、長期的には薬剤依存を減らし、生活の質を向上させる効果が期待されます。