鼻の症状とは

鼻は、呼吸を通して体内に空気を取り入れるだけでなく、吸い込んだ空気を温め・湿らせ・ろ過し、さらに嗅覚を通じてにおいを感じるという大切な働きを担っています。
鼻の内部は、鼻腔と副鼻腔という空間から成り、粘膜がウイルスや異物の侵入を防いでくれています。
しかし、鼻は非常にデリケートな器官であるため、アレルギーや感染症、構造の異常などにより、鼻づまり・鼻水・においの異常・鼻血・違和感など、さまざまな症状が現れやすい部位です。
一時的な症状であっても、放置すると慢性化したり、生活の質を大きく損なったりすることがあるため、気になる症状があるときには、どうぞお早めにご相談ください。

鼻の症状の種類

鼻が詰まる

鼻呼吸がしづらくなり、口呼吸になることで乾燥やいびき、睡眠の質の低下にもつながります。
粘膜の腫れやポリープ、構造の異常が原因となることがあります。

考えられる疾患としては以下のようなものがあります。

  • アレルギー性鼻炎・花粉症
  • 急性・慢性副鼻腔炎
  • 鼻茸(鼻のポリープ)
  • 鼻中隔弯曲症

など

鼻水が出る

サラサラとした透明な鼻水や、粘り気のある膿のような鼻水が出ることがあります。
アレルギー反応や感染症、炎症性疾患によって鼻水の性状が異なります。

考えられる疾患としては以下のようなものがあります。

  • アレルギー性鼻炎(透明で水っぽい)
  • 風邪・急性副鼻腔炎(黄色や緑色の膿性鼻水)
  • 慢性副鼻腔炎(長引く鼻水)

など

においがしない

食べ物の風味が分からなくなったり、ガス漏れなどの危険なにおいに気づけなかったりと、嗅覚の障害は人間にとって非常に影響が大きい症状です。
においを感じる粘膜や神経の障害が原因となって発症します。

考えられる疾患としては以下のようなものがあります。

  • 副鼻腔炎による嗅覚障害
  • アレルギー性鼻炎
  • 感冒後嗅覚障害(風邪による一過性のもの)
  • 頭部外傷・神経疾患に伴う神経性嗅覚障害

など

鼻血が出た

乾燥した季節や鼻を強くかんだ後などに突然起こることがあります。
多くは鼻の入り口付近にある毛細血管が破れたものですが、繰り返す場合は原因の精査が必要です。

考えられる疾患としては以下のようなものがあります。

  • 鼻炎による粘膜の炎症
  • 鼻をいじる習慣、外傷
  • 高血圧、血液疾患
  • 鼻中隔弯曲症による局所的な負担
  • まれに鼻腔腫瘍

など

鼻がくさい

鼻の中や喉から悪臭を感じる場合は、副鼻腔内に膿がたまっていたり、感染を起こしていたりする可能性があります。
まわりの人から「においが気になる」と指摘されることもあります。

考えられる疾患としては以下のようなものがあります。

  • 慢性副鼻腔炎
  • 鼻茸の感染
  • 異物(小児に多い)

など

鼻水が喉に流れる(後鼻漏)

鼻水が前ではなく喉の奥へと流れ込む症状で、痰が絡んだような違和感や、しつこい咳の原因になることがあります。
多くは朝方や就寝中に強く感じられます。

考えられる疾患としては以下のようなものがあります。

  • 慢性副鼻腔炎
  • アレルギー性鼻炎
  • 慢性鼻炎(特に高齢者に多い)

など

主な鼻の疾患について

アレルギー性鼻炎・花粉症

症状

くしゃみ・水のような透明な鼻水・鼻づまりが三大症状で、「アレルギー性鼻炎の三徴候」とされています。
ほかに目のかゆみや涙、喉のかゆみなどを伴うこともあります。
重症になると睡眠障害や集中力の低下を引き起こし、学業・仕事への影響も出ます。

原因

花粉やハウスダスト、ダニ、ペットの毛など、アレルゲンと呼ばれる物質が鼻の粘膜に触れることで、体が過剰に反応することで起こります。
スギ・ヒノキなど飛散時期に限定して起きる季節性のものは「花粉症」、通年で症状が出るものは「通年性アレルギー性鼻炎」と分類されます。

治療法

抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の内服、点鼻薬、点眼薬での対症療法を行います。
また、ステロイド点鼻薬を併用することで鼻づまりの改善が期待されます。
重症花粉症例に対しては、ゾレアによる治療も検討します。
こうした治療と並行して、生活環境の見直し(居住環境の掃除、マスク、花粉対策など)を行うことも重要です

詳しくはアレルギー性鼻炎のページ
詳しくは重症花粉症治療(ゾレア)のページ

慢性鼻炎

症状

粘り気のある鼻水、鼻づまり、鼻声、嗅覚の低下、後鼻漏(鼻水が喉へ落ちる)などが続きます。
口呼吸が続くことによる口の渇きや、喉の炎症、気管支の炎症などを招く場合もあります。
季節や体調によって悪化しやすく、頭痛や睡眠障害を引き起こし、長期にわたって日常生活の質を下げる原因にもなってしまいます。

原因

アレルギー性鼻炎からくる場合が多くみられます。
またウイルスや細菌による慢性の粘膜炎、環境因子(喫煙・乾燥・大気汚染)、加齢による粘膜の変化、あるいは鼻の血管の過敏が関与する場合もあります。
さらに鼻中隔弯曲症のように、構造的な問題が慢性鼻炎を引き起こすこともあります。

治療法

抗ヒスタミン薬や抗コリン薬、粘膜収縮薬、ステロイドなどの点鼻薬を用いて、鼻づまりの症状を抑えます。
アレルギーがある場合は抗アレルギー薬を用いることもあります。
またネブライザー治療により鼻粘膜に薬剤を直接届けることで効果を高めます。
難治例には、粘膜をレーザーで焼灼する治療や、鼻中隔の手術などを検討することもあります。

薬剤性鼻炎

症状

点鼻薬の使用後は一時的に鼻が通るものの、時間が経つと再び強い鼻づまりが起こります。
薬を使えば使うほど依存が進み、効果が得られにくくなる悪循環に陥ります。

原因

血管収縮作用をもつ市販の点鼻薬などを長期間(1~2週間以上)連用することにより、粘膜が薬に対して過敏になり、慢性的な粘膜の腫れが起こることが原因です。

治療法

点鼻薬の使用を中止することが第一歩です(医師の指導のもと段階的に)。
ステロイド点鼻薬などを使い、炎症を抑えながら回復を促します。
薬剤依存が強い場合や症状が重い場合は、内視鏡下手術による粘膜の処置を行うこともあります。

副鼻腔炎(急性・慢性)

副鼻腔炎は、鼻の周囲にある「副鼻腔」と呼ばれる空洞に炎症が起きる疾患です。
副鼻腔は、顔の左右にそれぞれ4個ずつ、合計8個あり、鼻腔とつながっています。
ここに炎症が起こることで、さまざまな症状が現れます。
急性と慢性に分けられ、慢性化すると症状が長引き、日常生活に影響を及ぼします。

急性副鼻腔炎

症状

風邪の症状に続いて、黄色や緑色の膿のような鼻水、鼻づまり、頬の痛み、頭重感などが現れます。
熱や倦怠感を伴うこともあります。
眼の周囲が腫れることもあり、重症化すると視力や脳に影響する危険もあります。
放置すると副鼻腔内に膿がたまり、慢性的の副鼻腔炎に至ることもあります。

原因

ウイルスや細菌が副鼻腔(鼻の周囲の空洞)に入り込んで感染・炎症を起こすことが原因です。
ウイルスによる風邪の後に細菌感染が起こると悪化します。
中耳炎、気管支炎、喘息との関連も深く、特にお子様や高齢の方では注意が必要です。

治療法

細菌感染の場合は、抗生物質の内服を行います。
対症療法として、鼻水や炎症を抑えるための去痰薬・消炎剤・点鼻薬を使用する場合もあります。
またネブライザー治療(吸入療法)などで鼻腔を洗浄し、通気を改善します。

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)

症状

3か月以上、黄色や緑色の膿性鼻水、鼻づまり、後鼻漏、嗅覚低下などの症状が続きます。
疲労感や集中力低下など、慢性的な不調を伴うこともあります。

原因

急性副鼻腔炎が治りきらなかった場合や、アレルギー体質、鼻中隔の弯曲、鼻茸(ポリープ)などの構造的要因、あるいは「好酸球性副鼻腔炎」と呼ばれる難治性のタイプもあります。

治療法

抗菌薬、ステロイド点鼻薬、抗アレルギー薬などによる薬物治療を行います。
効果が不十分な場合は「内視鏡下副鼻腔手術(ESS)」で病変部位を広げ、排膿を促す場合もあります。
好酸球性副鼻腔炎に対しては、術後も基本的に内服薬や点鼻薬等による治療の継続が必要になります。

嗅覚障害

症状

においがわかりづらくなる(嗅力低下)、あるいはまったく感じない(嗅覚消失)という症状がみられるものです。
味覚にも影響し、食事の楽しみが減ってしまいます。

原因

副鼻腔炎や花粉症などのアレルギー性鼻炎でにおいの通り道がふさがれる「気導性障害」、風邪やウイルス感染後、頭部外傷や神経系の疾患(パーキンソン病やアルツハイマー型認知症など)で嗅神経自体がダメージを受ける「神経性障害」も含まれます。
さらに加齢による変化や、ストレス、薬剤性などがあります。

治療法

原因疾患がある場合は、その治療(副鼻腔炎の治療やアレルギー性鼻炎の治療)を行います。
神経性障害では改善が難しいこともありますが、早期治療で改善する例もあります。
その場合、嗅覚リハビリテーション(特定のにおいを継続的に嗅ぐなど)が有効なこともあります。

鼻血

症状

突然の出血で驚かれる方が多いですが、大半は鼻の前方(キーゼルバッハ部位)からの軽い出血です。
ただし出血が止まりにくい、何度も繰り返す場合は注意が必要です。

原因

粘膜の乾燥や鼻をいじる癖、あるいはスポーツや転倒などによる打撲がもっとも多い原因です。
また、鼻中隔の曲がりによる局所の負担によって鼻血が出やすいこともあります。
これ以外では高血圧や動脈硬化による影響のほか、血液疾患(血小板減少、白血病など)や鼻腔腫瘍など、重篤な疾患の可能性もあるため気になる場合はお早めにご相談ください。

治療法

軽度の場合は頭を前に傾け、鼻を圧迫して止血し、軟膏などで粘膜を保護します。
再発する場合は、出血部位を電気焼灼または薬剤で止血処置を行います
背景にある全身疾患が疑われる場合は、血液検査などを行います。

鼻茸(はなたけ)

症状

鼻茸は、鼻や副鼻腔の粘膜が腫れてできるポリープ状のものです。
これにより鼻づまりが慢性的に続き、睡眠障害や、においが分かりづらくなるなど、日常生活に大きく支障をきたします。
鼻声や後鼻漏を伴うこともあり、症状が強い場合は呼吸そのものがしにくくなります。

原因

副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎によって粘膜に慢性的な炎症が起き、粘膜がふくらんでできる良性のポリープです。
「好酸球性副鼻腔炎」と呼ばれるタイプの炎症では鼻茸の多発や再発が多くみられる傾向にあるため、体質との関連も考えられています。

治療法

ステロイドの点鼻薬や内服薬、抗アレルギー薬などによる薬物療法で炎症を抑えます。
薬物治療で効果が期待通りでない場合、内視鏡下手術で鼻茸を切除し、副鼻腔の通気性を改善することを検討します。
再発しやすいため、術後も副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎の継続的な管理が重要です。

鼻中隔弯曲症

症状

鼻づまり(片側または両側)、鼻血、いびき、においの低下、鼻の違和感などがみられます。
就寝時や運動時に呼吸がしにくくなることもあります。

原因

鼻の中央にある仕切りの軟骨・骨(鼻中隔)が左右どちらかに曲がっている状態が鼻中隔弯曲症です。
成長過程で自然に生じることや、外傷(鼻をぶつけるなど)によって曲がることもあります。
放置していると慢性的な鼻づまりによるさまざまな合併症(嗅覚障害、睡眠障害、中耳炎、慢性副鼻腔炎など)を引き起こします。

治療法

弯曲が軽度であれば、点鼻薬やアレルギー治療などの対症療法で対応します。
日常生活に支障がある場合は、根本的な治療として「鼻中隔矯正術」を行い、曲がった骨と軟骨を整えます。
手術は局所麻酔または全身麻酔で行われます。
お子様の場合は、成長期が過ぎた思春期以降に行うのが一般的です。