Bスポット療法とは
Bスポット療法(正式には「上咽頭擦過療法:EAT」)は、鼻と喉の奥にある「上咽頭」という部位に炎症がある場合に、その炎症を鎮めることを目的とした治療法です。
この部位は、ウイルスや細菌などにより慢性的な炎症が起こりやすく、自律神経の不調や全身の不定愁訴にも関与していると考えられています。
上咽頭の炎症部位を直接、薬剤を含ませた綿棒などで擦過することで炎症を鎮めていくことで、慢性的な不調の改善が期待されます。
当院ではBスポット療法を積極的に行っています。
新型コロナウイルス感染症のさまざまな後遺症に対しても行われている治療法で、以下のような方に有効であるとされています。
- 喉の違和感や痛みが長引いている方
- 鼻水が喉に流れる感じが常にある方
- 慢性の咳や痰に悩んでいる方
- 慢性的な副鼻腔炎を繰り返している方
- 疲労感・倦怠感が取れない方
- 微熱が続いている方
- 頭痛、肩こり、めまいなどがなかなか改善しない方
- 自律神経の乱れによる不調(不眠・動悸・集中力低下など)がある方
- 頭の中がもやもやする感じ(ブレインフォグ)がある方
- IgA腎症と診断された方
など
新型コロナウイルス感染症のほか、風邪をひいた後の喉の違和感がなかなか取れない方や、原因がはっきりしない体の不調が続いている方に対して、この治療が有効なケースがあります。
Bスポット療法の治療法
治療では、まず医師が専用の長い綿棒や金属製の擦過子に薬剤(主に塩化亜鉛)を含ませ、鼻または口から上咽頭へ到達させます。
そして炎症のある粘膜を丁寧に擦過します。
これにより、患部が収れんして、炎症を落ち着かせるという抗炎症作用が期待できます。
また、瀉血作用による上咽頭のうっ血の改善、迷走神経への刺激による自律神経系の機能改善なども期待できます。
1回で症状がすぐに改善することもありますが、多くは数回の継続で徐々に効果が現れます。
Bスポット療法の効果
Bスポット療法では、以下のような効果が期待できるとされています
慢性炎症の鎮静化
上咽頭の粘膜に直接薬剤を作用させ、擦過することで、炎症性物質(サイトカインなど)の産生を抑制し、慢性炎症を鎮めます。
これにより各種の慢性的な症状が軽減すると考えられています。
血流改善とリンパ流促進
炎症部位を擦過する刺激により局所の血流が改善し、滞留していた老廃物や炎症物質が排出されやすくなります。
これが頭重感や倦怠感の改善につながるとされています。
自律神経の安定化
上咽頭には迷走神経も分布し、自律神経に関わる反射が多く存在しています。
慢性炎症が続くと自律神経のバランスが崩れて交感神経が優位となり、不眠・動悸・集中力低下を引き起こすと考えられます。
Bスポット療法により炎症が鎮まることで、自律神経のバランスが整うことが期待されます。
免疫反応のリセット効果
上咽頭はリンパ組織が集まっており、外部からの侵入に対する免疫反応の重要な関門として全身の免疫系に強く関与する部位です。
この部位の慢性炎症は全身の免疫異常やだるさの原因になり得ます。
Bスポット療法により慢性刺激が抑えられることで、免疫系の過剰反応を抑制し、全身の不調が改善する可能性があります。
Bスポット療法による治療の流れ
- 診察・診断
- 鼻咽頭の炎症や関連する症状を確認し、Bスポット療法が有効かどうか判断します。
- 処置
- 鼻または口から専用器具で上咽頭へ薬剤を含ませ、炎症部位を擦過します。
- 処置後の確認
- 処置直後に少量の出血がみられる場合がありますが、自然に止まります。
- 継続治療
- 炎症の程度や症状に応じて、1週間に1〜2回程度、数回から十数回の治療を継続することがあります。
Bスポット療法の注意点
治療時の痛み
炎症部位を直接刺激するため、喉の奥にしみるような強い痛みを感じることがあります。炎症が強いほど、薬がしみて、ヒリヒリとした強い痛みを感じます。
多くの場合、数分で治まりますが、強い痛みの場合、数時間、または翌日まで痛みが残ることがあります。
痛みは回を重ねるごとに軽減する傾向にあります。
副作用
擦過部位から少量の出血がみられる(唾液や鼻水に血が混じる)場合がありますが、通常はすぐに止まります。
この出血も炎症が強いほど強く出る傾向にあります。
まれに一時的に咽頭の違和感や鼻水の増加がみられることもありますが、これは上咽頭の粘膜が薬で刺激を受けたことによるため、いずれも自然に改善することがほとんどです。
治療期間中に、薬を塗る前よりも症状が強くなる、頭が重く感じる、顔が腫れぼったくなる、ということが一時的起こる場合があります(好転反応)。
当院では、専門医が患者様一人ひとりの症状を丁寧に確認し、適応を見極めながら、Bスポット療法を行っています。
慢性的な症状でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。